ダービーに懸ける想い

今年もダービーが終わった。

制限解除の中、6万人を超える観衆が府中の杜につめかけ、暑い、熱いダービーデーを堪能したことだろう。

 

筆者は諸々を考え、パークウインズ中山の指定席からモニター越しにレースを観戦したが、パドックで騎乗するジョッキーが並ぶ姿に背筋がゾクゾクし、胸が高鳴った。現地の観客の人たちは尚更の興奮だったに違いない。

 

89代のダービー馬に輝いたのは友道康夫厩舎のドウデュース。鞍上はこれで6度目のダービー優勝を飾った武豊騎手だ。

 

最後の攻防は手に汗握る好勝負。先行したアスクビクターモアを外から捉えたドウデュースに、大外から後方でじっと脚を溜めて仕掛けたイクイノックスの強襲。

 

結果、クビ差抑えてドウデュースがゴール板を最初に駆け抜けた。

 

ダービーに相応しい好レースは、騎手の腕の見せ所でもある。逃げたデシエルトは宣言通りの戦法を貫徹、前半1,000m 58.9秒の早いペースを作り、レースを牽引した。人気を背負った皐月賞組のダノンベルーガ、ジオグリフ、オニャンコポンが中団に、その背後にドウデュースが、更にその後にイクイノックスが構える。

 

前に馬を置いて道中を進めたい、と語ったルメール騎手の位置どりはさすがの一言。やや後ろ過ぎでは、という見方は杞憂に過ぎず勝負所を冷静に見定めていたにちがいない。

 

ドウデュース鞍上の武豊騎手も前にライバルを置いての追走。ペースを掴み、どこでゴーサインを出すか、その長けた判断能力はズバリ冴え渡った。

 

よく喩えられるのは、自ずとゴールまでの道筋が見えるというものがあるが、キズナディープインパクトで勝利したような脚取りを重ねて観ている自分がいて、そう思っているだけのことかもしれない。ファンというのはそういうものだ。

 

それでも、4コーナーから直線に持ち出しそこからの末脚はどの馬よりも速いように思えた。さらにその外から剛脚を繰り出し詰め寄ったイクイノックスは馬体の仕上げがこれ以上ない、というギリギリのものに思えた。

 

パドック映像では腹から脚の付け根にかけてやや細く映った。仕上げすぎて細くなったのではないかと自分は思ったが、ネットのある方の見方は見えぬ調教を施したと思える仕上がりと評されていた。

 

よく見れば周回を重ねる足取りが堂々としており力強くも見える。キタサンブラックも3歳春は完成された古馬の時代に比べ線の細さはあった。しかし、馬体を大きく見せる感じは父譲りなのかもしれない。完成されたイクイノックスはどんな馬になるのだろうか。

 

1番人気に推されたダノンベルーガは4着。ラストはアスクビクターモアに迫ったが及ばなかった。能力の高さは誰もが感じるところだが、ダービーだけは他とは違う何かをこえなければ届かない、そんな運の悪さを感じる。

 

皐月賞馬のジオグリフは7着。喉鳴りを持つため、早い流れが気掛かりという記事もあった。位置どりや展開などもあるだろうが、見た目だけだが現状では、やや距離が長いかもしれない。

 

オニャンコポンは8着。内から機会を伺い脚を伸ばしたかったが、抜け出しが難しかったか最後は伸び切れずといった印象。夏を越しての成長をこの馬も期待したい。

 

さて、武豊凱旋門賞を勝たせたい、そういう想いの強い松島正昭オーナー。僅か6世代目でダービー馬のオーナーになる、オーナーの持つ運の強さも感じる。この後に待ち構えている海外への挑戦。本当のいばらの道はこれからで、夢だけでは難しいものになる。なんども高い壁に跳ね返されて来た武豊騎手自身も、目指す高みへの想いは誰よりも熱いはずだ。夢の舞台への勝利は勝ち取った。次は日本のホースマンの夢に戦いを挑む。

 

来週からは新馬戦が始まる。

ダービーからダービーへ、このサイクルもようやく定着して来たようだ。新しいスターの発見も楽しみな夏へ、いざ!